外資系金融機関の幹部の彼(48)は大のゴルフ好き。A社が経営する会員制レジャークラブに入会した。入会時はテニスコートとプールだけだったが、翌月ゴルフのショートコースが完成予定だった。
「一番乗りしたいね」
「将来はもっと広いコースも造る計画です」
彼とクラブの担当者の話は弾んだ。彼は60万円の入会・保証金を支払った。クラブには個人正会員、個人平日会員などがあったが、彼は、クラブの休日を除く、すべての日(全日)で施設を優先利用できる個人正会員に登録した。
クラブ内の利用を規定するのは会則で、会則5条には「会員は当社が別に定める施設利用料を支払って、施設を使用できる」とあった。
A社は4年前、コース改造を念頭に置き、会則を改定、新たに細則を制定した。旧会則5条にあたる改定会則7条は「個人平日会員を除く会員は、クラブ休日を除く全日に施設を優先的に利用できる。ただし、細則で別途制約がある場合、これを順守する」で、細則6条は「会員が利用できる施設は、細則制定時に完成しているもの」としてショートコースを明記した。
細則9条には「ゴルフ施設が増設、若しくはこれに準ずる大改造された場合で当社が指定するときは、別途追加金を支払うものとし、支払わないときは、ゴルフ場利用権は平日会員と同内容に変更される」と規定された。
3年前、A社は新コース工事のため、既存コースの一時閉鎖を会員に通知し、数億円かけて旧コースの2倍の距離がある新コース9ホールを、クラブの唯一のゴルフコースとして半年前に開設した。
彼は新コースの完成の通知を受け取ったが、細則を根拠に、180万円の追加金を支払わないと新コースの全日利用権が確保できないうえ、追加金を支払うか、支払わずに平日のみの利用権にするかの選択が求められていた。
「こんなもん、払えるか」
彼は通知を投げつけた。
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