姑のいびりで離婚?


 結婚して18年の彼女(45)は、すし職人の夫(48)から離婚を迫られている。

 2人は見合い結婚をした。結婚当初は、夫が姑(75)と同居していた借家で、仲良く新婚生活を始めた。翌年には長男も誕生したが、彼女には姑の存在が大きな悩みだった。

 姑は結婚5年目に離婚し、その後は職を転々として、ひとり息子を女手一つで育てた。夫への情愛は強く、同居後も彼女の結婚に反対した。長男の妊娠を機に夫が婚姻届を出すと、姑は彼女の前でこう言った。

 「私の戸籍を切るなんて」

 彼女へのあてこすりは露骨になり、長男を夫の子ではないとほのめかしたり、彼女の作った食事にも、目の前では手をつけなくなったりした。

 結婚3年目、夫はマイホームを建てるため土地を買い、彼女を喜ばせた。

 だが、土地・家屋の所有持ち分の大半が姑になっていた。購入資金の大半が、姑の貯金から出ていたのだ。

 「あなた、これはどういうことなの!」

 彼女は夫に文句を言った。

 「いいじゃないか。いずれ自分たちのものになるんだ」

 夫は軽くいなすつもりだった。

 しかし、彼女は腹の虫が治まらず、もともと勝ち気な性格が、これまで抑えていた姑に対する不満を吐き出させることになった。

 食事、光熱費、子供のしつけ、部屋の片付け、風呂掃除など、彼女と姑との言い合いは激しくなった。夫は見て見ぬふりをし、その場逃れの態度に終始した。

 2人の対立は解けず、結婚8年目で彼女ら夫婦は別に家を借り、姑と別居した。しかし、夫は機嫌とりに姑との接触を続け、彼女も姑の悪口を言い続けた。

 夫は仕事のトラブルが重なり、彼女との生活にも嫌気がさして、離婚を迫ってきた。彼女は子どもを連れて実家に戻ったが、生活費や養育費などの送金もなく、別居は9年目になった。

 
 
破綻責任ある夫の請求は疑問

 彼女の婚姻生活が崩れた原因は、自らの勝ち気な性格も一因だが、姑の彼女に対する仕打ちが、夫の優柔不断と姑寄りの対応と相まって、彼女を必要以上に刺激したことが主因と考えられる。姑がいなければ、夫婦間にこうした問題が生じたとは考えられないし、婚姻関係が回復する可能性もないとは言えない。

 仮に、婚姻関係が回復不可能なまで破綻(はたん)しているとしても、夫は姑の嫁いびりに加担した、という非難は免れない。破綻についての主な責任は、夫にあると言える。

 彼女には未成年の子がいるうえ、生活費などの未払いも続く。離婚は彼女をより過酷な環境に追い込むので、一般的には夫の離婚請求が認められるのは難しい。だが、別居期間が9年と長いことを理由に、認められる場合もある。

 
  筆者:本橋美智子、籔本亜里