亡夫の焼骨の帰属は


 中学生の彼女(13)は、父母が2年前に離婚し、現在は母の実家で祖父母と暮らしている。幼い頃、小児ぜんそくにかかり、完治していない。

 「あなたも子どもの世話を手伝ってくれない?」

 「子どもはお前の責任だろ。おれは忙しいんだ」

 母が彼女の世話を頼んでも、父はいつも拒絶した。やがて父の浮気が発覚し、父母の関係は悪化した。父は母に暴力を振るうようになった。

 7年前、母は彼女の世話を助けてもらうと告げ、祖父母の実家で同居を始めた。彼女が父と会うのは週末だけになった。母は彼女の病気だけでなく、父の暴力で心身共に疲れ果て、逃れたかったのだ。

 別居から4年が過ぎた頃、父が自宅へ戻るよう再三促したが母は拒否した。母の精神的な不安定さは続いていた。父の姿や言葉に、息が詰まる思いを感じていた。

 「だったら離婚だ。夫婦じゃないだろ。おれも自由になりたい」

 母は彼女のことを考えて思い悩んだ。結局、彼女の親権者を母とすることで承諾し、離婚が成立した。

 その後、病状が悪化した母は自ら命を絶った。母の死を知った父は、祖父母に彼女の引き取りを求めてきた。

 「父である私が親権者になって、育てていきたい」

 父の申し出に、祖父母は怒りを隠さずに拒否した。

 「娘が死んだのはあんたのせいだ!孫を育てるくらいの経済的余力もうちにあるし、あんたには渡せない!」

 彼女も父との暮らしを望まなかった。母がいなくなったショックはもとより、父が母に暴力を振るっていた記憶が鮮明だったからだ。友達がたくさんいる現在の学校を離れたくないことや、祖父母が優しいという理由もあった。

 その後、父は下校中の彼女に会おうと近づいてきた。その度に彼女は振り切った。懸念した祖父は、彼女の後見人になることを考え始めた。

 彼女は、落ち着いた生活が送れることを願っている。

 
 
娘との信頼築くのが前提に

 未成年者の単独親権者が死亡した場合、残る生存親が自動的に親権者になるわけではない。

 未成年者の親権者がいなくなると、後見が開始され、申し立てにより家庭裁判所が後見人を選任する。

 一方、生存親は、後見人が選任された後であっても、親権者の変更を家庭裁判所に申し立てることができる。生存親への親権者変更を認めるかどうかは、子の利益を基準とし、具体的には監護の実績、子の意思などを尊重して判断される。

 彼女の場合、7年間、祖父母が彼女を監護し、彼女も生活の継続を希望していることから、現時点で父への親権者の変更が認められる可能性は極めて低いと思われる。

 父親は、彼女との交流を通じて、まず信頼関係を築くことが望ましい。

 
  筆者:本橋美智子、籔本亜里