彼女(52)が代表取締役を務める会社は、墓地を経営している。父親が始めた事業だが、5年前に急逝したために彼女が跡を継いだ。
会社は先ごろ、新たな墓地用に郊外のA土地を取得した。この土地は西を川、東をAが管理する緑地に挟まれ、南北を第三者の土地に囲まれた袋地の東北の角にあり、北側は第三者の土地、東側は緑地に接する形だ。
そのような袋地は制約が多いので彼女は迷ったが、墓地に適したまとまった広さがある土地がなかなか見つからなかったので、取得することにした。この土地から公道に出る通路は、緑地内の、自動車が通れる幅員4メートルの道路、通称「緑道」だけだった。
土地を取得した後、彼女の会社は役所に墓地経営の許可を申請したが、これに手間取っているうちに、緑地を管理するAがポールを立てるなどして「緑道」を歩行者しか通れないようにし、自動車の通行を禁じた。Aは緑地の隣に墓地が造られるのが嫌だったようだ。
一方、北側の第三者の土地は4つに分割された。彼女の会社は墓地用の土地と隣接する区画を購入し、第三者の土地の北を通る市道に抜ける道を造った。しかし、これも購入した区画の隣の利用関係が障害となって自動車が通れるほど広くすることはできなかった。
彼女は、墓地用地の利用価値が落ちてしまうことを懸念し、緑地を管理するAと交渉することにした。
「緑地内に、自動車による通行のための通行権を認めてもらえませんか」
しかし、予想通り、Aの反応は冷淡だった。
「北側の区画を買ったんなら、そっちの方で通路を確保されるべきでしょう。緑地内に通行権を主張するのは筋違いです」
「そっちは道路の幅がとれないんです。なんとか・・・」
「ダメだよ、ダメ!」
Aは一向に取り合おうとしない。彼女は思案に暮れた。
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