休憩とれない1人勤務

彼女(29)は2年前、会社勤めを辞めて、大好きな車に触れられるガソリンスタンドで働くことにした。

 彼女が勤務しているのは、24時間営業のセルフスタンドで、客が自分で給油や洗車などをする。従業員の仕事は、施設や客の行動を点検・監視したり、釣り銭が切れないように準備したり、機械トラブルに対応したりすることだ。経費削減のため、勤務は原則1人の態勢だった。

 勤務形態は3種類ある。朝番は午前7時から午後4時までで賃金日額7200円、昼番は午後3時から11時までで6450円、夜番は午後10時から翌朝8時までで1万円。

 休憩は原則として1時間に10分だが、「スタンド内敷地からは休憩時間でも出てはならない」「営業に支障をきたさないよう、業務を優先する。休憩時間内に業務を行った場合は、他の時間に振り替えて休憩をとる」との指示が出されていた。

 彼女は、主に朝番と夜番を担当していた。

 空いている給油口に客を誘導したり、機械の使い方を教えたり料金を受け取ったりと、1人だけの勤務なので対応に追われる。客足が途切れても、セルフスタンドは危険物取り扱い施設として消防法などで厳しく規制されているため、監視をゆるめるわけにはいかなかった。

 「勤務態勢に無理があります。時間帯によっては、食事やトイレにも行けません」

 彼女はスタンドの経営者に勤務条件の改善を求めた。

 「人を増やすのはいいが、時間当たりの賃金は下がるけど、それでもいいの?」

 経営者は、激しい価格競争の中で人件費の増額は困難だと反論した。

 「休憩をきちんともらえないなら、その分を業務として計算し、給料に反映させてください!」

 彼女は、たまっていた不満をぶちまけた。

 
 
記録とって労基署に相談を

「労働時間」には実際に労働する時間はもちろん、使用者の指揮命令に入っている時間(拘束時間)も含まれる。いつ客が来るか分からない状態で客を待っている時間も労働時間である。

 彼女は休憩時間内の労働に対して割増賃金の請求や、食事やトイレなどに不便を被ったことを労働基準監督署に訴えることもできる。だが、いきなり訴えるのは感情がこじれるし、仕事を続けられるような対策をとりたい。

 そこで、毎日の仕事の記録をとり、経営者に伝える。それでも変化がない場合には、記録を持って会社のある地域の労基署に相談に行き、しかるべき指導をしてもらう。監督署からの指導が有効になれば、彼女の休憩分の賃金は2年分までさかのぼってもらうことができる。

 
  筆者:音川敏枝、籔本亜里