貸した土地にゴミの山

1年半前、彼(44)は亡父から故郷の土地を相続した。土地といっても町はずれの小山で、使い道もなく放置されていた。そこへ、父の昔からの知り合いだというAという男(62)が彼を訪ねてきた。

 「あの山を友人のBに貸してくれないか。資材の置き場に使いたいんだ」

 AとBは、建築関係の仕事仲間だという。

 「いいですよ、どうせ使い道がないから。賃料が入るなら結構なことです」

 彼はさっそく、B(63)と賃貸借契約を結んだ。賃料は年額150万円、使用目的は資材置き場、契約期間は1年とし、彼の承諾なしに転貸したり賃借権を譲渡したりすることを禁じた。Aとも、Bの債務について連帯保証契約を結んだ。

 貸し渡しの後、賃料は毎月末にきちんと振り込まれていたので、彼は安心していた。

 ところが2カ月前、帰郷した際に山の様子を見に行ったところ、とんでもない光景に出あった。コンクリートやビニールの塊、廃プラスチック類などの産業廃棄物が大量に捨てられていたのだ。

 「約束が違うじゃないか」

 彼はBにかみついた。

 「そんなふうに使うなんて聞いていなかったが……」

 Bも廃棄物が投棄されていることに驚いていた。

 「聞いていなかった、とはどういうこと? あなたに貸した土地ですよ」

 実は、Bは契約を結んでまもなく、彼の承諾を得ずにCに土地を転貸していた。ところがCは、産業廃棄物の処分場として使うことは隠していたのだ。彼は、ただちに無断転貸と用法違反を理由に賃貸借契約を解除。Bと、連帯保証人のAに、廃棄物を早急に撤去するよう求めた。

 「そこまでは責任を持てない……」

 Bは、Cが勝手に行った不法投棄の責任までは負わないはずだと抵抗した。

 
 
連帯保証人も原状回復義務

不動産の賃借人は、賃貸借契約に違反する行為によって生じた賃借物の損害について、賃貸借契約終了時に原状回復義務を負う。このケースでは、Bは賃貸借契約に違反して土地をCに無断転貸した結果、Cが産業廃棄物を不法に投棄したのだから、Bは、Cが産業廃棄物を投棄することを予見していなかったとしても、原状回復義務を免れることはできない。

 一方、保証契約の趣旨は通常、主債務者が負担する一切の債務を保証し、契約の不履行によって相手方に損失を被らせないことにあるから、保証人は、反対の特約がない限り、原状回復義務についても責任を負う。主債務者のBが原状回復義務を免れない以上、Aも同じ義務を負う。彼は2人に廃棄物の撤去を請求できよう。

 
  筆者:大迫恵美子、籔本亜里