離婚騒動が過ぎてから

 彼女(38)は2年前、息子(6)を連れて離婚した。結婚して8年、原因は夫(42)の浮気だった。相手は会社の後輩(29)で、4年前からの関係だった。

 「休みの日くらい、子どもの相手をしてよ」。夫が浮気の真っ最中、つゆ知らぬ彼女は毎日子どもの世話で頭がいっぱいだった。「今日も仕事、仕事」。彼はそそくさとデートにはせ参じていた。

 しばらくして、夫の浮気に気がついた。夜の関係がすっかりなくなったこと、休日出勤や残業がないことが判明したからだ。

 ほどなく離婚騒動へ発展。浮気が許せないことはもちろんだったが、相手の女性からも妊娠したと言われ、彼女は離婚やむなしと考えた。

 離婚が最終決着するまではつらい日々だった。慰謝料や養育費など条件が折り合わず、裁判にまで発展した。

 「妻は家の金を隠し持っている」。夫側は金銭負担を少しでも軽くしようとウソ八百を並べ、彼女の生活態度やプライバシーを攻撃してきた。早く決着したいとの思いもあり、家を失うなど不利な条件をのんで彼と別れた。

 しかし、彼女はすぐに収入になる仕事を見つけられず、わずかな貯金も尽きて生活保護を受けることになった。

 一方、彼の方も離婚後にどんでん返しが待っていた。妊娠したのは彼の子ではなく、二股をかけられた彼は、相手の女に捨てられた。そればかりか2人の関係が社内でうわさになってしまい、彼は閑職へ配置換えになった。

 3カ月前、都内のある公園に息子と散歩にやってきた彼女は、ベンチにぼんやりと座っている彼と出くわした。

 「久しぶりだな……」

 「久しぶりね……」

 離婚後、2人が会うのは初めてだった。とりとめもなく互いの近況をしゃべった。

 「髪の毛に白いものがふえたわね」「おれが悪かったんだなぁ……」。久しくなかった穏やかな時間が流れた。

 
 
選択には後悔のないように

 

 夫の不倫を知ったとき動揺しない女性はいないだろう。別れようという衝動に駆られるのも無理はない。ただ、離婚の最終決着までには相当なエネルギー が必要だ。裁判まで発展すると、ウソや感情表現を並べて攻撃しあうことも少なくなく、精神的にいっそう厳しくなる。できれば、その前段階で決着を図りた い。

 本当に離婚が最善なのか、離婚後の生活も想定しながら一生懸命考えることが大切だ。渦中にあると冷静さを失う。第三者の意見も聴きながら後悔のないように。

 このケースでは、時間と環境の変化が、2人が互いに見つめ直す機会を提供している。法的な形はどうあれ、2人が納得できれば復縁という選択もあるだろう。

 
  筆者:菱田貴子、籔本亜里