彼女(36)は3年前、夫(38)の浮気と暴力が原因で離婚した。娘(10)の養育費をどこまで払うかで条件が折り合わず、離婚の話が持ち上がって
から最終決着までに2年かかった。弁護士を間に挟んだ数度の話し合いの結果、月5万円を娘が成人するまで支払うことで合意し、公正証書にした。
1年前、彼女は養育費の入金が止まっているのに気づいた。さっそく元夫に催促の手紙を書いたが、1週間待っても返事がこない。しびれを切らし、自宅や携帯に電話をしたが、いつも留守電だった。
彼女は頭に来て彼が勤める保険会社に電話をし、彼を呼び出した。
彼女は会うなり文句を言った。「養育費はどうなっているの?」「ああ、忙しくて忘れてた」「忘れてたはないでしょ。別れてもあなたの娘よ!」「おれさ、2週間後に再婚するんだよ。相手もバツイチで子どもがいるんだ。養育費、勘弁してくれないか」
突然飛び出した彼の再婚話に、彼女はあっけにとられた。しかし、ひるんではいけないと思い、冷静を装って言った。「そんな勝手なこと、許せないわ!」。結局、その場は話がつかなかった。
娘を育てる大切なお金だ。なくなると困る。彼女は離婚した友人に相談してみた。
「いざとなったら給料を差し押さえるって言ってやったらいいわ。彼も困るわよ」
「差し押さえ?」
「給料の一部をあなたの口座に振り込んでもらうの。会社に知れて格好悪いでしょ」
彼女は少しホッとした。
翌日、彼女は彼と交渉しようと会社に電話した。ところが……。「先月末で退職されました。どちらに転職されたかはわかりません」
電話を切ると、彼女は彼をつかまえるべく彼の自宅へ走った。 |