障害年金あきらめない

 去年の秋、彼女(55)は娘に車いすを押してもらいながら、市役所の無料年金相談会に出かけた。18年前にリウマチを発症したことがもとでだんだん体調が悪くなり、車いすが欠かせなくなっていた。彼女は、相談会で障害基礎年金の申請を勧められた。

 さっそく近所の社会保険労務士のもとを訪れ、申請の手続きをした。「月に約7万円入るのは助かるわ。もっと早く申請しておけばよかった」。子どもたちにいつまでも負担をかけてはいけないと思っていた彼女はほっとした。

 ところが数カ月後、地元の社会保険事務所から意外な答えが返ってきた。「保険料の滞納期間があるので、障害年金を支給できません」

 電話口で不支給の処分を伝えられた彼女はびっくりした。「滞納? そんな馬鹿な。ずっと保険料を払っていたはずですけど?」

 社会保険事務所の職員が改めて事情説明にやってきたが、回答は同じだった。手続きを依頼した社会保険労務士にも何度か電話をしたが、明確な回答を得られなかった。

 彼女のリウマチの初診日は87年1月で、国民年金に加入したのは86年4月。初診日以前に、一定期間の保険料を納めている必要があるのに、その要件が満たされていないという理由だった。

 それから約1年、彼女は納得いく説明を得る方途を探し続けた。そして、別の社会保険労務士がようやく事情を解明してくれた。20年前の国民年金制度の大 幅改正で、それまで任意加入だった第3号被保険者が強制加入に変わった。その際、任意加入期間中の分は未納期間として扱われないことになっており、彼女も それに該当したのだが、社会保険事務所の担当者が解釈を誤っていたのだ。

 「専門家も間違うほど複雑な制度ってこと?」。彼女はいまだにもやもやした気持ちが晴れないでいる。

 
 
解釈や手続きミスあり得る

 

 障害基礎年金を受給するには、保険料納付要件を満たしていなければならない。初診日前に原則として国民年金加入期間の3分の2以上の保険料を納めて いなければならず、保険料免除の申請をしていた場合はその期間の算入も認められる。ただし、これらの条件を満たさなくても、初診日の直近1年間に保険料の 滞納がなければ認められる。

 彼女の場合、制度改正前は未加入だったため、担当者が滞納していたと思いこんだようだが、受給要件は満たしていた。昨年の手続き開始時にさかのぼって年金を受けることができるだろう。

 担当者が解釈を誤るケースや、思わぬ手続き上のミスもありえないことではないので、納得できない場合はあきらめずに専門家にセカンドオピニオンを求めよう。

 
  筆者:安田洋子、籔本亜里