「バツ2」は義父のせい?

  彼女(38)は生まれたばかりの娘を抱えながら「こういうの、バツ2と言うのかな」とつぶやいた。2年前、ある県の役所に勤める太郎(37)との同居を始めたが、それがうまくいかなくなっていた。婚姻届は出していない。

 実は10年前、彼女は当時勤めていた会社の同僚と結婚したが、3年間で破局を迎えた。もう男は懲り懲りと思っていたところ、過労で入院。そんな時、友人の紹介で知り合ったのが太郎だった。

 「再婚」後の新生活は、農家である太郎の実家で始まった。義父(66)は「農作業を手伝ってもらおうとは思っとらんから」と言ったが、太郎も休日には両 親のいる田畑に出かけて手伝う以上、知らん顔はできない。彼女も慣れないながら畑に通い始めた。ほどなく、それが皆にとって当たり前の景色になった。

 しばらくすると、彼女は妊娠した。つわりがひどく、寝込んでしまうまでになり、農作業どころではなくなった。

 「すみません。お手伝いできなくて」。彼女が寝床から謝ると、当初は義父も気遣いを示した。しかし、寝込む日々が多くなるにつれ、義父の態度が明らかに変わった。

 「仕事ができない嫁だ」「あの娘が来てから家が暗くなった」。部屋の向こうで、義父が義母や太郎に文句を言っているのが聞こえてきた。やがて、彼女に面と向かって「うちの財産を狙っとんのか」と言いがかりまでつけるようになった。

 「あなたから、何か言ってくれない」と彼女は太郎に助けを求めたが、両親に対し彼は弱腰だった。

 いたたまれなくなった彼女は、家を飛び出し、東京に戻ってきた。すると今度は「自分に恥をかかせた」と、義父が手紙を寄こす。彼女のSOSに太郎は動くどころか、離婚を切り出してきた。「もうあそこには戻れない」。気がかりなのは娘の将来だ。
 
 
不当な干渉には慰謝料請求

  このケースで、義父は内縁関係に不当に干渉し破局を招いたといえる。彼女は内縁の夫である太郎に対して内縁破棄による慰謝料を請求すると共に、義父に対しても慰謝料を請求できる可能性がある。

 これに対し「婚姻解消は当事者間の問題で義父に責任はない」との反論もありうる。確かに、内縁の破局は最終的には当事者である配偶者の意向で決まるが、近親者の言動がその意向に大きな影響を与えることは否定できない。

 配偶者の肉親が相手方配偶者の追い出しに主導的な役割を果たしたといえる場合は、内縁に対する社会観念上許容される限度をこえた不当な干渉として責任を 負うと考える。どこまでが限度かは具体的に判断するしかないが、「嫁いびり」が過ぎると、内縁であっても不法行為となる。
 
  筆者: 本橋美智子 、籔本亜里