「育休」取れば減給なの
 
彼女(35)は情報機器関連の中堅メーカーで週3日、総務兼営業のパートタイマーとして働いてきた。パートとはいえ、前の職場で培った事務処理や営業の能力を評価されており、時給は悪くなかった。

  2年前、妊娠した。結婚5年目だった。商社マンの夫には、子育てへの協力を、あまり期待できそうになかった。

  できるだけ、子どものそばにいてあげたかったので、会社に育児休業を申請しようと考えた。パート歴も4年に達しており、認められるだろうと思った。

  だが、男性上司に相談すると、「パートで育休なんて取れるのかなぁ。会社を辞めるしかないんじゃないの」と相手にされなかった。パートが育休をとった前例はなかった。リストラも進んでおり、会社の人員に余裕がないのも確かだった。

  悩んでいると、たまたま上司が異動した。すると、新しい上司からは、すんなりと産前産後で、計9カ月の休暇を認められた。女の子を産み、すくすくと育った。

  昨秋、会社に復帰した。勤務時間は、育休前より週に6時間ほど短くしたが、仕事は社員に負けないように頑張った。新商品については、帰宅後も子どもをあやしながら資料をめくって覚え、現場から取り残されないように努めた。

  ところが、理解があると思っていた上司は、どこかよそよそしくなった。仕事の報告にも、視線を合わせず、適当に「わかった」というだけだった。

  ことし初め、次年度の給与を決める1年間の業務査定があった。上司は眼鏡に手をかけ、手元の書類を見ながら言った。

  「成果が前年度より落ちているので、2ランク下げるから」

  なぜ? 育休をとったから?

  ほかに理由が思いつかない。合点がいかなかったので、思い切って食い下がった。

  「確かに9カ月は休みましたが、本来、認められている休暇ではないのですか。復帰後も成績はあげたと思います」

  上司は、あくまで育休のせいではないと言う。でも、客観的かつ具体的なデータにもとづく説明はなかった。どうしても納得できなかった。

  休んだのだから、減給も仕方ないのだろうか。彼女は肩を落として家路についた。
 
 
休業後の待遇を確認しよう

育児休業は原則的に、1日単位で雇われている者、期間の定めのある労働者を除く、「パートも含む、すべての男女労働者」が取れる。

  今回のケースでは、週3日勤務のパートとはいえ、4年の契約更新の実績があることから、育休は当然に認められる。

  02年春の法改正で、育休の申請・取得によって解雇その他、不利益な取り扱いをしてはならないと明文化された。ただし、「不利益にならない」ための基準や具体策が明示されているわけではないため、実際には育休前より減給される例は少なくない。査定方法は会社側に委ねられていることから、マイナス査定の根拠が一概に育休取得にあるとも言いにくい現実もある。

  とはいえ、会社には、休業後の賃金、配置、その他の労働条件を定めることが義務付けられている。これらの点については、休業前にきちんと確認しておきたい。
 
  筆者:籔本亜里、安田洋子