ネット保険はなぜ安い
 
  5カ月前のことだ。人材派遣会社で総務を担当する彼女(33)は、同僚から「インターネットで自動車保険に入れば割安よ」と薦められた。早速、それまでの保険を解約、ネットで新たな保険に乗り換えた。かかった時間はわずか20分ほど。確かに、同じような内容でもトータルで3万円も安かった。

 3日後の朝。車で、慣れた道を会社へと走った。渋滞ポイントで、歩道ではしゃぐ子供たちの姿に気を取られ、ガシャン。

 「ああ、やってしまった」

 前の車に追突した。新しい保険に入ったばかりなのに……。

 幸い、互いにけが人はなかったが、前の車の後部が大きくへこんだ。警察を呼んで現場検証をしてもらい、事故証明書が発行された。その日の昼休みには必要な書類を手元に用意し、保険会社に電話を入れた。あとは保険に任せるしかない。

 1週間が過ぎ、保険会社から連絡が来た。

 「今回のお客様の事故は、当社の補償の対象にはならないことになりました」

 「何で? どうして?」

 予想もしない事態となった。

 理由は、ネット上で選択した「車の使用目的」にあった。彼女は「主に日常・レジャー使用」をチェックしていたため、通勤での車使用は補償対象にならないというのだ。

 「『主に』日常・レジャー使用、とあったじゃないですか。通勤利用が補償の対象外とは、どこにも書いていなかったし」

 1時間あまり電話で食い下がってみたものの、保険会社の答えは変わらなかった。

 ネット上での契約は、質問の数こそ多いが、当てはまる項目にチェックを入れるとスイスイ進んでいく。

 彼女は、何の迷いもなく「主に日常・レジャー使用」を選んでいた。実は、次の項目に「業務での使用」があったが、そこには目を留めずに進んでいったのだった。

 「保険を気軽に考えていた」

  自分のうかつさを後悔する彼女のもとに、追い打ちをかけるように事故の相手から約80万円の請求書が届いた。
 
 


保険が3万円も割安であるのには、理由がある。車の利用頻度と事故発生率の点から、保険会社は一般に「日常・レジャー使用」の価格を「業務での使用」より割安に設定する。このようなリスク細分型は確かに合理的だが、割安になっても、自分にとって必要最低限の保障を満たしているかどうかはきちんと確認したい。

        特に、ネット上での契約は、内容の設定・確認が完全に自己責任の世界。「主に」の意味など不明な点は、とことん保険会社に尋ね、場合によっては専門家に相談した方がいい。