何でお金がたまらない
 
  外資系メーカーで営業部門のプロジェクトマネジャーをしている彼女(35)は、こんど部長クラスに昇進する。過去10年間の努力と業績が認められたのだ。販売した商品に喜ぶお客の姿を見ると、営業の仕事は面白いと思う。1千万円近くの年収にも満足している。

 しかし、彼女は貯金ができない。帰宅はいつも午前様近い。休日出勤もしばしば。必然的に自宅は会社に近く、夜道も安心な駅のそばで、セキュリティー万全のマンションになる。当然、家賃はそれなりにかかる。いまは月22万円。これで月給の手取りの半分近くが飛ぶ。

 食事も、ほとんど外食だ。朝も時間節約のために会社近くのコーヒー店でエスプレッソとクロワッサンで済ます。スーツの費用もバカにならない。ストレス発散のために年に数回は旅行する。毎月、最低1回はエステに通う。忙しいとストレスでお肌はボロボロ、肩も凝る。そんなこんなで、年収1千万あっても、お金がたまらないのだ。

 「将来を考えると貯金をしないといけないのはわかっているんです。でも、毎日に追われて、月末ふと気づくと財布が空っぽなんですよね」

 やはり外資系企業に勤める女友達も同じ問題を抱えていた。仕事をセーブしようかとも考えた。外資系なので、そのあたりの融通はきく。だが、自分がいないと仕事が進まない、との自負がある。一方で、責任あるポジションから離れることに一抹の不安を感じてもいる。

 「女性ゆえのプレッシャーかな。負けないように走っていなきゃと思うんですよね」

 そんなある日、会社の男性上司が脳卒中で突然倒れ、帰らぬ人となった。仕事熱心で多くの重要プロジェクトを中心になって動かしていた。

 「さぞ会社は大変なことになると思っていたんです。でも、何だかんだと会社は動くんですよね。そう思うと、これでいいのかとまた考えちゃいました」

  人もうらやむキャリアで堂々としている彼女が、伏し目がちにつぶやくように言った。
 
 


キャリア女性は、仕事に打ち込むために発生する日常生活での問題を、とりあえず金銭で処理しがち。それが貯金のできない要因になっている。注意しなければならないのは、今の自分を「点」でしか見なくなり、日々流されていくこと。長期的な「線」の視点で、自分が将来どうありたいかを考え、人生のゴールから今を眺める発想に立ってみたい。

  貯金は自分のゴールを豊かにする手段のひとつ。自分にとって何が豊かなのかを書いて、それをもとに、貯金の目標額を定め、メリハリをつけたお金の使い方と貯金法を考えたい。