離婚より悔しかった事
 
  仕事をしてない方のお子さんを預かるのは……」

 目の前で、市役所の職員が困惑の表情を浮かべていた。

 彼女(30)は半年前、3歳の子どもを抱えて離婚した。夫が働こうとせず、このままでは埒(らち)があかないと思ったからだ。

 当然、夫からの養育費は期待できない。反対を押し切って結婚したので、両親にも頼りづらい。子どもを預けて働くため、公立の保育園に空きが出たと聞いて申し込んだが、最初はのれんに腕押しだった。

 「職探しをするために預けたいんです」。粘りに粘って、近いうちに仕事を見つけるという条件で入園を約束してもらった。

 アパートの家賃8万円も含め、生活費を月20万円弱に抑えても、半年で貯金は尽きる。彼女はその足で、児童扶養手当の申請の窓口に立ち寄った。収入ゼロの身には、わずかの足しでもありがたい。

 だが、すんなりとは認められず、質問攻めにあった。今夏から、手当上限の月額4万2370円を支給される所得条件が、年収約205万円未満から130万円未満に引き下げられたうえ、養育費の8割を所得に算入するなど、チェックが厳しくなったためだ。

 なんとか手続きを終え、ほっとした瞬間、男性職員の言葉がぐさりと胸に突き刺さった。

 「手当だけではやっていけないでしょ。若いんだから再婚したら……」

 それから1カ月間、数社をあたったが、菓子店員の経験しかない彼女を正社員として雇うところはなかった。思いあぐねた末、市役所を再び訪ねた。

 「生活保護って受けられますか?」

 仕事の有無や預貯金、住居の形態など、また質問の嵐だ。審査の結果は後日に、と言ったあと、窓口の男性はこう続けた。

 「保護の対象になるかどうかは調査しだいだから」

  自ら離婚の道を選んだとはいえ、手当や生活保護の申請のたびに、なぜ、プライバシーを根ほり葉ほり聞かれたり、見下した態度を取られたりして、それに耐えなければならないのか。悔しくて涙がこみあげてきた。
 
 


財政事情から母子家庭への手当が大幅に減らされた現状では、公的機関などに掛けあって利用できる母子サービスを探す積極性が必要だ。居住地で内容は違うが、一例として母子住宅や医療費助成、母子生活支援施設、JR通勤定期の特別割引、水道料金の福祉割引、職業訓練手当、母子福祉貸付金などがある。子どもとの生活を維持するため、生活保護も、サポートを受けた分は将来自立して、「税金」の形で返せばいいと割り切って、ためらわず申請したい。